Android KTX Android Jetpack の一部。
Android KTX は、Android Jetpack およびその他の Android ライブラリに含まれる Kotlin 拡張機能セットです。KTX の拡張機能によって、Jetpack、Android プラットフォーム、その他の API で、Kotlin が簡潔になってわかりやすくなります。そうした簡素化のため、KTM の拡張機能は、次のような Kotlin 言語機能を活用します。
- 拡張関数
- 拡張プロパティ
- ラムダ
- 名前付きパラメータ
- パラメータのデフォルト値
- コルーチン
たとえば、SharedPreferences
を扱う場合、優先設定データを変更するにはエディタを作成する必要があります。また、次の例のように、編集が完了したら変更を適用または commit する必要があります。
sharedPreferences
.edit() // create an Editor
.putBoolean("key", value)
.apply() // write to disk asynchronously
Kotlin lambda は、このユースケースに最適です。エディタ作成後に実行するコードのブロックを渡してコードを実行させ、SharedPreferences
API に変更をアトミックに適用させることで、より簡潔なアプローチが可能になります。
Android KTX Core 関数 SharedPreferences.edit
の一例を次に示します。これにより、編集関数が SharedPreferences
に追加されます。この関数は、変更の commit あるいは適用を指示する最初の引数として、オプションの boolean
フラグを取ります。また、SharedPreferences
エディタで実行するアクションを、ラムダの形式で受け取ります。
// SharedPreferences.edit extension function signature from Android KTX - Core
// inline fun SharedPreferences.edit(
// commit: Boolean = false,
// action: SharedPreferences.Editor.() -> Unit)
// Commit a new value asynchronously
sharedPreferences.edit { putBoolean("key", value) }
// Commit a new value synchronously
sharedPreferences.edit(commit = true) { putBoolean("key", value) }
呼び出し元は、変更を commit するか適用するかを選択できます。action
ラムダはそれ自体が SharedPreferences.Editor
上の匿名拡張関数であり、署名で示されているとおりに Unit
を返します。この理由により、ブロック内部において SharedPreferences.Editor
上で作業を直接実行することが可能になっています。
最後に、SharedPreferences.edit()
署名には inline
キーワードが含まれます。このキーワードによって、関数が使用されるたびにその関数のコンパイル済みバイトコードをコピー&ペースト(あるいはインライン)すべきか、Kotlin コンパイラに指示されます。これにより、この関数が呼び出されるたびにすべての action
に新しいクラスをインスタンス化する手間がなくなります。
ラムダを使用してコードを渡し、オーバーライド可能な合理的デフォルトを適用し、inline
拡張関数を使用してこれらの動作を既存の API に追加するこのパターンは、Android KTX ライブラリで提供される拡張機能の典型です。
プロジェクトで Android KTX を使用する
Android KTX の使用を開始するには、プロジェクトの build.gradle
ファイルに次の依存関係を追加します。
Groovy
repositories { google() }
Kotlin
repositories { google() }
AndroidX モジュール
Android KTX は複数のモジュールに整理されています。各モジュールには 1 つ以上のパッケージが含まれます。
各モジュール アーティファクトの依存関係をアプリの build.gradle
ファイルに含める必要があります。アーティファクトには必ずバージョン番号を追加してください。最新のバージョン番号は、各アーティファクトに対応するこのトピック内のセクションで確認できます。
Android KTX には、共通フレームワーク API 用の Kotlin 拡張機能と複数のドメイン固有の拡張機能を提供する単一のコアモジュールが含まれています。
コアモジュールを除くすべての KTX モジュール アーティファクトによって、build.gradle
ファイル内で基盤となる Java 依存関係を置き換えることができます。たとえば、androidx.fragment:fragment
の依存関係を androidx.fragment:fragment-ktx
に置き換えることができます。この構文はバージョニング管理の改善に役立ちます。依存関係宣言の要件が追加されることはありません。
Core KTX
Core KTX モジュールによって、Android フレームワークの一部である共通ライブラリに拡張機能が提供されます。これらのライブラリには、build.gradle
への追加が必要な Java ベースの依存関係はありません。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.core:core-ktx:1.13.1" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.core:core-ktx:1.13.1") }
Core KTX モジュールに含まれるパッケージのリストを次に示します。
- androidx.core.animation
- androidx.core.content
- androidx.core.content.res
- androidx.core.database
- androidx.core.database.sqlite
- androidx.core.graphics
- androidx.core.graphics.drawable
- androidx.core.location
- androidx.core.net
- androidx.core.os
- androidx.core.text
- androidx.core.transition
- androidx.core.util
- androidx.core.view
- androidx.core.widget
Collection KTX
Collection 拡張機能には、ArrayMap
、LongSparseArray
、LruCache
など、メモリ効率の良い Android のコレクション ライブラリを扱うためのユーティリティ関数が含まれています。
このモジュールを使用するには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.collection:collection-ktx:1.4.4" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.collection:collection-ktx:1.4.4") }
次の例に示すように、Collection 拡張機能は Kotlin の演算子オーバーロードを利用して、コレクション連結などの処理を簡略化します。
// Combine 2 ArraySets into 1.
val combinedArraySet = arraySetOf(1, 2, 3) + arraySetOf(4, 5, 6)
// Combine with numbers to create a new sets.
val newArraySet = combinedArraySet + 7 + 8
Fragment KTX
Fragment KTX モジュールには、フラグメント API を簡略化する拡張機能が多数含まれています。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.fragment:fragment-ktx:1.8.3" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.fragment:fragment-ktx:1.8.3") }
Fragment KTX モジュールでは、ラムダを使用してフラグメント トランザクションを簡略化できます。次に例を示します。
fragmentManager().commit {
addToBackStack("...")
setCustomAnimations(
R.anim.enter_anim,
R.anim.exit_anim)
add(fragment, "...")
}
また、viewModels
および activityViewModels
プロパティ デリゲートを使用して ViewModel
を 1 行にバインディングすることもできます。
// Get a reference to the ViewModel scoped to this Fragment
val viewModel by viewModels<MyViewModel>()
// Get a reference to the ViewModel scoped to its Activity
val viewModel by activityViewModels<MyViewModel>()
Lifecycle KTX
Lifecycle KTX は、個々の Lifecycle
オブジェクトに対する LifecycleScope
を定義します。このスコープ内で起動されたすべてのコルーチンは、Lifecycle
が破棄されたときにキャンセルされます。Lifecycle
の CoroutineScope
にアクセスするには、lifecycle.coroutineScope
または lifecycleOwner.lifecycleScope
プロパティを使用します。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.lifecycle:lifecycle-runtime-ktx:2.8.5" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.lifecycle:lifecycle-runtime-ktx:2.8.5") }
次の例は、lifecycleOwner.lifecycleScope
を使用して計算済みテキストを非同期で作成する方法を示しています。
class MyFragment: Fragment() {
override fun onViewCreated(view: View, savedInstanceState: Bundle?) {
super.onViewCreated(view, savedInstanceState)
viewLifecycleOwner.lifecycleScope.launch {
val params = TextViewCompat.getTextMetricsParams(textView)
val precomputedText = withContext(Dispatchers.Default) {
PrecomputedTextCompat.create(longTextContent, params)
}
TextViewCompat.setPrecomputedText(textView, precomputedText)
}
}
}
LiveData KTX
LiveData を使用する際に、値を非同期で計算することが必要になる場合があります。たとえば、ユーザーの優先設定を取得して UI に提供する場合などです。このようなケースのために、LiveData KTX には、suspend
関数を呼び出して結果を LiveData
オブジェクトとして提供する liveData
ビルダー関数が用意されています。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.lifecycle:lifecycle-livedata-ktx:2.8.6" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.lifecycle:lifecycle-livedata-ktx:2.8.6") }
次の例で、loadUser()
は別の場所で宣言された中断関数です。liveData
ビルダー関数を使用して loadUser()
を非同期で呼び出し、次に emit()
を使用して結果を出力できます。
val user: LiveData<User> = liveData {
val data = database.loadUser() // loadUser is a suspend function.
emit(data)
}
LiveData
でのコルーチンの使用の詳細については、アーキテクチャ コンポーネントで Kotlin コルーチンを使用するをご覧ください。
Navigation KTX
Navigation ライブラリの各コンポーネントには、API をより簡潔にして Kotlin で使いやすいように適応させる独自の KTX バージョンがあります。
これらのモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.navigation:navigation-runtime-ktx:2.8.1" implementation "androidx.navigation:navigation-fragment-ktx:2.8.1" implementation "androidx.navigation:navigation-ui-ktx:2.8.1" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.navigation:navigation-runtime-ktx:2.8.1") implementation("androidx.navigation:navigation-fragment-ktx:2.8.1") implementation("androidx.navigation:navigation-ui-ktx:2.8.1") }
次の例に示すように、拡張関数とプロパティ委任を使用して宛先引数にアクセスし、宛先に移動します。
class MyDestination : Fragment() {
// Type-safe arguments are accessed from the bundle.
val args by navArgs<MyDestinationArgs>()
...
override fun onViewCreated(view: View, savedInstanceState: Bundle?) {
view.findViewById<Button>(R.id.next)
.setOnClickListener {
// Fragment extension added to retrieve a NavController from
// any destination.
findNavController().navigate(R.id.action_to_next_destination)
}
}
...
}
Palette KTX
Palette KTX モジュールは、カラーパレット作業時に Kotlin を使いやすくするためのサポートを提供します。
このモジュールを使用するには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.palette:palette-ktx:1.0.0" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.palette:palette-ktx:1.0.0") }
たとえば、Palette
インスタンスを扱う場合、get 演算子([ ]
)を使用して、指定された target
向けに selected
見本を取得できます。
val palette = Palette.from(bitmap).generate()
val swatch = palette[target]
Reactive Streams KTX
Reactive Streams KTX モジュールを使用すると、ReactiveStreams
パブリッシャーから Observable 型の LiveData
ストリームを作成できます。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.lifecycle:lifecycle-reactivestreams-ktx:2.8.5" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.lifecycle:lifecycle-reactivestreams-ktx:2.8.5") }
たとえば、ユーザー数が少ないデータベースがあるとします。アプリでは、データベースをメモリに読み込んでから UI にユーザーデータが表示されます。これを行うためには RxJava などが使用されます。Room
Jetpack コンポーネントでは、ユーザーリストを Flowable
として取得できます。このシナリオでは、フラグメントまたはアクティビティの全存続期間にわたって Rx パブリッシャーのサブスクリプションを管理する必要もあります。
ただし、LiveDataReactiveStreams
では、LiveData
のシンプルさを享受しつつ、RxJava とその演算子および作業スケジューリング機能の充実したセットも活用できます。
val fun getUsersLiveData() : LiveData<List<User>> {
val users: Flowable<List<User>> = dao.findUsers()
return LiveDataReactiveStreams.fromPublisher(users)
}
Room KTX
Room 拡張機能は、データベース トランザクション向けのコルーチン サポートを追加します。
このモジュールを使用するには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.room:room-ktx:2.6.1" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.room:room-ktx:2.6.1") }
以下に、Room でコルーチンを使用する例をいくつか示します。最初の例では、suspend
関数を使用して User
オブジェクトのリストを返します。2 つ目の例では、Kotlin の Flow
を利用して非同期で User
リストを返します。なお、Flow
を使用すると、クエリ対象のテーブル内の変更も通知されます。
@Query("SELECT * FROM Users")
suspend fun getUsers(): List<User>
@Query("SELECT * FROM Users")
fun getUsers(): Flow<List<User>>
SQLite KTX
SQLite 拡張機能は SQL 関連のコードをトランザクション内にラップします。これにより、多くのボイラープレート コードを省くことができます。
このモジュールを使用するには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.sqlite:sqlite-ktx:2.4.0" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.sqlite:sqlite-ktx:2.4.0") }
次の例では、transaction
拡張機能を使用してデータベース トランザクションを実行しています。
db.transaction {
// insert data
}
ViewModel KTX
ViewModel KTX ライブラリでは、ViewModel
からコルーチンを起動しやすくする viewModelScope()
関数が提供されています。CoroutineScope
は Dispatchers.Main
にバインドされ、ViewModel
が消去されると自動的にキャンセルされます。各 ViewModel
に新しいスコープを作成するのではなく viewModelScope()
を使用することが可能です。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.lifecycle:lifecycle-viewmodel-ktx:2.8.5" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.lifecycle:lifecycle-viewmodel-ktx:2.8.5") }
たとえば、次の viewModelScope()
関数は、バックグラウンド スレッドでネットワーク リクエストを送信するコルーチンを起動します。ライブラリは、すべての設定および対応するスコープ消去を処理します。
class MainViewModel : ViewModel() {
// Make a network request without blocking the UI thread
private fun makeNetworkRequest() {
// launch a coroutine in viewModelScope
viewModelScope.launch {
remoteApi.slowFetch()
...
}
}
// No need to override onCleared()
}
WorkManager KTX
WorkManager KTX は、最大級のコルーチン サポートを提供します。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "androidx.work:work-runtime-ktx:2.9.1" }
Kotlin
dependencies { implementation("androidx.work:work-runtime-ktx:2.9.1") }
Worker
を拡張する代わりに、API が若干異なる CoroutineWorker
を拡張できるようになりました。たとえば、シンプルな CoroutineWorker
を構築してネットワーク オペレーションを実行するには、次のようにします。
class CoroutineDownloadWorker(context: Context, params: WorkerParameters)
: CoroutineWorker(context, params) {
override suspend fun doWork(): Result = coroutineScope {
val jobs = (0 until 100).map {
async {
downloadSynchronously("https://www.google.com")
}
}
// awaitAll will throw an exception if a download fails, which
// CoroutineWorker will treat as a failure
jobs.awaitAll()
Result.success()
}
}
CoroutineWorker
の使用に関する詳細については、CoroutineWorker でのスレッド化をご覧ください。
WorkManager KTX では、現在のコルーチンを中断する Operations
および ListenableFutures
の拡張関数も追加されています。
次の例では、enqueue()
によって返される Operation
が中断されます。
// Inside of a coroutine...
// Run async operation and suspend until completed.
WorkManager.getInstance()
.beginWith(longWorkRequest)
.enqueue().await()
// Resume after work completes...
その他の KTX モジュール
AndroidX の外部に存在する追加の KTX モジュールもインクルードできます。
Firebase KTX
Android 向けの Firebase SDK の一部は Kotlin 拡張ライブラリを備えており、アプリで Firebase を使用する際に慣用的な Kotlin コードを記述できます。詳細については、次のトピックをご覧ください。
Google Maps Platform KTX
Google Maps Platform Android SDK で使用できる KTX 拡張機能が複数あります。これらの拡張機能を利用すると、Kotlin 言語の拡張関数、名前付きパラメータ、デフォルト引数、分割宣言、コルーチンなどの機能を使用できます。詳しくは、次のトピックをご覧ください。
Play Core KTX
Play Core KTX では、Play Core ライブラリに SplitInstallManager
および AppUpdateManager
の拡張関数を追加することで、ワンショット リクエスト用 Kotlin コルーチンおよびステータス更新モニタリング用フローのサポートが追加されています。
このモジュールをインクルードするには、アプリの build.gradle
ファイルに次の行を追加します。
Groovy
dependencies { implementation "com.google.android.play:core-ktx:1.8.1" }
Kotlin
dependencies { implementation("com.google.android.play:core-ktx:1.8.1") }
Flow
のステータス モニタリングの例を次に示します。
// Inside of a coroutine...
// Request in-app update status updates.
manager.requestUpdateFlow().collect { updateResult ->
when (updateResult) {
is AppUpdateResult.Available -> TODO()
is AppUpdateResult.InProgress -> TODO()
is AppUpdateResult.Downloaded -> TODO()
AppUpdateResult.NotAvailable -> TODO()
}
}
詳細情報
Android KTX の詳細については、DevBytes の動画をご覧ください。
問題を報告または機能を提案するには、Android KTX の Issue Tracker をご使用ください。