自動入力を IME および自動入力サービスと統合する

Android 11 以降、キーボードやその他のインプット メソッド エディタ(IME)は、自動入力候補をシステムがメニューに表示するのではなく、候補領域またはそれに類似するものにインライン表示できます。こうした自動入力候補にはパスワードやクレジット カード情報などのプライベート データが含まれることがあるため、ユーザーが選択するまで、候補は IME に表示されません。この機能を使用するには、IME と自動入力サービス(パスワード マネージャーなど)を更新します。IME または自動入力サービスがインライン自動入力をサポートしていない場合、Android 11 より前のバージョンと同様に、候補はメニューに表示されます。

ワークフロー

このフローで、「IME」は現在のキーボードまたは他の入力エディタを意味し、「候補プロバイダ」は自動入力候補の該当するプロバイダを意味します。入力フィールドとユーザーの設定に応じて、候補のプロバイダはプラットフォームまたは自動入力サービスの場合があります。

  1. ユーザーが、自動入力をトリガーする入力フィールド(パスワードやクレジット カードの入力フィールドなど)にフォーカスします。

  2. プラットフォームが、現在の IME と該当する候補プロバイダにクエリを行い、インライン自動入力をサポートしているかどうかを確認します。IME または候補プロバイダがインライン自動入力をサポートしていない場合は、Android 10 以前と同様に、候補がメニューに表示されます。

  3. プラットフォームが IME に対し、「候補リクエスト」を提供するよう求めます。この候補リクエストは、表示する候補の最大数を指定し、各候補の「表示仕様」も提供します。表示仕様では、最大サイズ、テキストサイズ、色、フォントデータなどを指定し、候補プロバイダを IME のデザインに合わせることができます。

  4. プラットフォームが候補プロバイダに対し、リクエストされた候補数まで候補を提供するよう求めます。各候補には、候補の UI を含む View をインフレートするためのコールバックが含まれます。

  5. プラットフォームが IME に対し、候補の準備ができたことを通知します。IME は、コールバック メソッドを呼び出して各候補の View をインフレートすることで候補を表示します。ユーザーの個人情報を保護するため、この段階では IME は候補を認識しません

  6. ユーザーが候補のいずれかを選択すると、ユーザーがシステム メニューから候補を選択した場合と同様に、IME に通知されます。

以降のセクションでは、インライン自動入力をサポートするように IME または自動入力サービスを構成する方法について説明します。

インライン自動入力をサポートするように IME を構成する

このセクションでは、インライン自動入力をサポートするように IME を構成する方法について説明します。IME がインライン自動入力をサポートしていない場合、プラットフォームはデフォルトで、メニューに自動入力候補を表示します。

IME は supportsInlinedSuggestions 属性を true に設定する必要があります。

<input-method
    xmlns:android="http://schemas.android.com/apk/res/android"
    android:supportsInlineSuggestions="true"/>

プラットフォームで自動入力候補が必要になると、IME の InputMethodService.onCreateInlineSuggestionsRequest() メソッドが呼び出されます。このメソッドを実装する必要があります。次のものを指定して、InlineSuggestionsRequest を返します。

  • IME が求める候補の数。
  • 候補の表示方法を定義する、各候補の InlinePresentationSpec

候補がある場合、プラットフォームは IME の onInlineSuggestionsResponse() メソッドを呼び出し、候補を含む InlineSuggestionsResponse を渡します。このメソッドを実装する必要があります。実装で InlineSuggestionsResponse.getInlineSuggestions() を呼び出して候補のリストを取得し、InlineSuggestion.inflate() メソッドを呼び出して各候補をインフレートします。

インライン自動入力をサポートするように自動入力サービスを構成する

このセクションでは、インライン自動入力をサポートするように自動入力サービスを構成する方法について説明します。アプリがインライン自動入力をサポートしていない場合、プラットフォームはデフォルトで、メニューに自動入力候補を表示します。

自動入力サービスは、supportsInlinedSuggestions 属性を true に設定する必要があります。

<autofill-service
    xmlns:android="http://schemas.android.com/apk/res/android"
    android:supportsInlineSuggestions="true"/>

IME で自動入力候補が必要になると、プラットフォームは Android 11 より前のバージョンと同様に、自動入力サービスの onFillRequest() メソッドを呼び出します。ただし、サービスは渡された FillRequest オブジェクトの getInlineSuggestionsRequest() メソッドを呼び出して、IME によって作成された InlineSuggestionsRequest を取得する必要があります。InlineSuggestionsRequest は、必要なインライン候補の数と、それぞれの表示方法を指定します。IME がインライン候補をサポートしていない場合、このメソッドは null を返します。

自動入力サービスは、InlineSuggestionsRequest でリクエストされた最大数まで InlinePresentation オブジェクトを作成します。表示は、InlineSuggestionsRequest で指定されたサイズの制約に従う必要があります。候補を IME に返すには、候補ごとに 1 回 Dataset.Builder.setValue() を呼び出します。Android 11 では、インライン候補をサポートするバージョンの Dataset.Builder.setValue() が提供されています。