Wear OS アプリはスマートウォッチ上で直接実行され、センサーや GPU などのハードウェアにアクセスできます。ウェアラブル アプリは Android ソフトウェア開発キット(SDK)を使用する他のアプリに似ていますが、デザインと機能が異なります。
Wear OS アプリはスマートフォン アプリとは独立して動作する必要があるため、ユーザーはスマートフォンを柔軟に選択できます。詳細については、スタンドアロンの Wear OS アプリとスタンドアロンではない Wear OS アプリをご覧ください。
注: Wear OS アプリをデバッグするで説明されているように、USB、Wi-Fi、または Bluetooth を使用して実際のスマートウォッチでアプリをテストできます。実際のスマートウォッチでアプリをデバッグする方が、全体的なユーザー エクスペリエンスを適切に評価できます。Android Studio のスマートウォッチ エミュレータを使用して、さまざまな形状やサイズの画面でアプリをテストすることもできます。
環境をセットアップする
最新バージョンの Android Studio をインストールします。Android Studio でのアプリの作成については、プロジェクトの概要をご覧ください。
SDK Manager を使用して、Android プラットフォームが、Wear OS をサポートする最新バージョンの Android 11(API レベル 30)であることを確認します。
Wear OS アプリを中国で公開する予定の場合は、中国向けの Wear OS アプリを作成するをご覧ください。
Wear OS アプリを作成する
Wear OS アプリ プロジェクトを作成するには、Android Studio の新しいプロジェクト ウィザードを使用します。
Wear OS プロジェクトを開始する
Android Studio でプロジェクトを作成する手順は次のとおりです。
- [File] > [New] > [New Project] をクリックします。
- [Project Template] ウィンドウで [Wear OS] タブをクリックし、[Empty Compose Activity] を選択して [Next] をクリックします。
[New Project] ウィンドウでプロジェクトに名前を付け、標準のプロジェクト情報を入力して、[Finish] をクリックします。
Android Studio では、データ プロバイダ用のアプリ モジュールを使用してプロジェクトが作成されます。
-
アプリ モジュールの
build.gradle
ファイルで以下のことを行います。-
android
セクションで、compileSdkVersion
が 33 に設定されていることを確認します。 -
android
セクションで、targetSdkVersion
が 30 に設定されていることを確認します。 -
dependencies
セクションを Wear OS 固有の依存関係に置き換えます。
-
- Android マニフェスト ファイルで、
<uses-feature>
タグが定義されていることを確認します。次の例に示すように、android:name="android.hardware.type.watch"
を定義します。<manifest> ... <uses-feature android:name="android.hardware.type.watch" /> ... </manifest>
- Android Studio プロジェクトを同期します。新しいモジュールでコードを実行するには、次のセクションの手順をご覧ください。
エミュレータを起動して Wear OS アプリを実行する
エミュレータを使用するには、Android Virtual Device(AVD)を構成します。SDK Manager から、Android SDK Platform-Tools の最新バージョンがインストールされていることを確認します。
次のように AVD を構成してアプリを実行します。
- Android Studio で Android Virtual Device Manager を開きます([Tools] > [AVD Manager] を選択します)。
- [Create Virtual Device] をクリックします。
- [Category] ペインで、[Wear OS] を選択し、ハードウェア プロファイルを選択します。[Next] をクリックします。
- ダウンロードするシステム イメージを選択します。たとえば、[API Level] が 30、[Target] が「Android 11.0 (Wear OS)」のイメージを選択します。[Next] をクリックし、次に [Finish] をクリックします。
- Android Virtual Device Manager を閉じます。
-
Android Studio のツールバーで、先ほど作成した AVD をターゲット デバイスのメニューから選択し、実行アイコン
をクリックします。
AVD が起動し、しばらくするとアプリが実行され、「Hello...」というメッセージが表示されます。
AVD の使用について詳しくは、Android Emulator 上でアプリを実行するをご覧ください。
Wear OS プロジェクトを更新する
既存のプロジェクトが存在する場合は、settings.gradle
ファイルの更新が必要になる可能性があります。google()
を使用して、Google の Maven リポジトリを指定するようにしてください。関連情報については、Google の Maven リポジトリをご覧ください。
Android Studio プロジェクトの settings.gradle
ファイルに以下を追加します。
dependencyResolutionManagement { ... repositories { google() jcenter() } }
警告: JCenter リポジトリは 2021 年 3 月 31 日に読み取り専用になりました。詳細については、JCenter サービスの更新をご覧ください。
スマートウォッチをセットアップする
アプリのスマートウォッチへのデプロイは、アプリのスマートフォンへのデプロイと類似しています。
ここでは、スマートウォッチに USB ポートが搭載されていると仮定します。スマートウォッチに USB ポートが搭載されていない場合は、Wi-Fi または Bluetooth を使用してスマートウォッチを接続する際の手順をご覧ください。
次のようにして、スマートウォッチで adb
デバッグを有効にします。
- スマートウォッチで [設定] メニューを開きます。
- メニューの一番下までスクロールします。[開発者向けオプション] が表示されない場合は、[システム]、[デバイス情報] の順にタップします。
- ビルド番号を 7 回タップします。
- [設定] メニューで [開発者向けオプション] をタップします。
- [ADB デバッグ] を有効にします。
次の手順に沿ってスマートウォッチを接続します。
- USB を使用してスマートウォッチをパソコンに接続し、アプリをスマートウォッチに直接インストールできるようにします。
- スマートウォッチで、[このパソコンからの USB デバッグを常に許可する] をタップして、[OK] をタップします。
スマートウォッチを接続したら、アプリをビルドして実行するの説明に沿って、デプロイ ターゲットを選択してアプリを実行します。
スマートフォンをセットアップする
このセクションでは、Wear OS コンパニオン アプリを使用してスマートフォンをセットアップする方法を説明します。
注: Wear OS アプリをスマートフォンとは独立してスタンドアロンで動作させることをおすすめします。ただし、Wear OS アプリがモバイルアプリに依存している場合は、最新の Wear OS コンパニオン アプリを使用してスマートフォンを更新する方法について、以下の情報をご覧ください。
Android 版のコンパニオン アプリを使用する
Android スマートフォンで、Wear OS by Google スマートウォッチ アプリの掲載情報に移動します。[更新] をタップしてアプリをダウンロードし、インストールします。インストール後、アプリの [自動更新] が選択されていることを確認します。ダウンロードしたアプリを更新するの「Android アプリを個別に自動更新する方法」をご覧ください。[開く] をタップしてアプリを起動します。
Android スマートフォンとスマートウォッチをペア設定する
スマートフォンにコンパニオン アプリをインストールしたら、必要に応じて、古いスマートウォッチのペア設定を解除します。次に、スマートフォンを新しいイメージが書き込まれたスマートウォッチとペア設定します。手順は次のとおりです。
- スマートフォンで、デバイスのリストからスマートウォッチのデバイス名を選択します。スマートフォンとスマートウォッチにペア設定コードが表示されます。両者のコードが一致していることを確認します。
- [ペア設定する] をタップして、ペア設定プロセスを進めます。スマートウォッチがスマートフォンに接続されると、確認メッセージが表示されます。スマートフォンの画面に、スマートフォンのアカウントのリストが表示されます。
- スマートウォッチに追加して同期する Google アカウントを選択します。
- 画面ロックを確認し、パスワードを入力して、スマートフォンからスマートウォッチへのアカウントのコピーを開始します。
- ウィザードの手順に沿ってペア設定プロセスを完了します。
iPhone 用のコンパニオン アプリ
iOS コンパニオン アプリは、iOS 8.2 以降が搭載された iPhone で利用できます。インストールする手順は次のとおりです。
- iPhone で App Store にアクセスし、Wear OS by Google コンパニオン アプリをダウンロードしてインストールします。
- スマートウォッチと iPhone に表示される手順に沿ってペア設定プロセスを開始します。詳細については、スマートウォッチのセットアップに関する問題を解決するをご覧ください。
デバイスとスマートウォッチ エミュレータをペア設定する
Wear OS エミュレータのペア設定アシスタントを使用するか、手動で、スマートウォッチの Android Virtual Device(AVD)やエミュレータとデバイスをペア設定します。
Wear OS エミュレータのペア設定アシスタントを使用する
注: Wear OS エミュレータのペア設定アシスタントを使用するには、Android 11(API レベル 30)以降を搭載したスマートフォンに Google Play ストアがインストールされている必要があります。また、最新のアシスタント機能を使用するには、Wear エミュレータで API レベル 28 以降が実行されている必要があります。エミュレートしているデバイスのシステム イメージをアップグレードするには、SDK Manager を使用します。
Wear OS エミュレータのペア設定アシスタントを使用すると、Wear エミュレータの管理や接続を簡単に行えます。複数の Wear デバイスを 1 台の仮想スマートフォンまたは物理スマートフォンとペア設定できます。Android Studio でも、以前にペア設定したデバイスが記憶され、起動時に再度ペア設定されます。
2 台のデバイスをペア設定する手順は次のとおりです。
- Wear エミュレータを作成します(まだ作成していない場合)。
-
デバイス マネージャーで、ペア設定するデバイスの横にあるオーバーフロー メニュー アイコンをクリックし、[Pair Wearable] を選択します。
図 1. Wear エミュレータとペア設定できるデバイスのオーバーフロー メニュー - Wear OS エミュレータのペア設定アシスタントが起動します。スマートフォンのエントリで [Pair Wearable] を選択すると、利用可能な Wear デバイスのリストが表示されます。Wear デバイス側で起動した場合は、利用可能なスマートフォンのリストが表示されます。ペア設定するデバイスを選択し、[次へ] をクリックします。
- Android Studio が起動してデバイスの準備ができるまでに、数分かかることがあります。スマートフォンに Wear OS コンパニオン アプリがインストールされていない場合は、メッセージに沿って Play ストアにログインし、インストールしてからセットアップします。
- スマートフォンの Wear OS アプリでデバイスをペア設定するには、オーバーフロー メニューをクリックして [エミュレータとペア設定] を選択します。
デバイスが正常にペア設定されると、デバイス マネージャーのペア設定されたデバイスの横に小さなアイコンが表示されます。オーバーフロー プルダウン メニューをクリックして [詳細を表示] を選択すると、ペア設定済みのデバイスの一覧が表示されます。

スマートフォンとスマートウォッチ AVD をペア設定する
開発用のスマートウォッチ AVD で Google アカウントを使用する場合は、スマートフォンとスマートウォッチ AVD をペア設定して Google アカウントを同期します。手順は次のとおりです。
- スマートフォンをセットアップするの手順を実施します。
- スマートフォンで、開発者向けオプションと USB デバッグを有効にします。
- スマートフォンとパソコンを USB で接続します。
-
次のコマンドを使用して、スマートフォンを接続するたびに、AVD の通信ポートが接続済みのスマートフォンに転送されるようにします。
adb -d forward tcp:5601 tcp:5601
- スマートフォンの Wear OS コンパニオン アプリで、標準のペア設定プロセスを開始します。たとえば、開始画面で [設定する] ボタンをタップします。または、すでにペア設定されているスマートウォッチがある場合は、左上のメニューで [新しいスマートウォッチを追加] をタップします。
- スマートフォンの Wear OS コンパニオン アプリで、オーバーフロー メニューをタップして [エミュレータをペア設定] をタップします。
- 設定アイコンをタップします。
- [デバイスの設定] の [エミュレータ] をタップします。
- [アカウント] をタップして、Google アカウントを選択します。ウィザードの手順に沿って、アカウントをエミュレータと同期します。必要に応じて、デバイスの画面ロックのパスワードと Google アカウントのパスワードを入力し、アカウントの同期を開始します。
スマートフォンを複数の Wear デバイスに接続する
2 台目の Wear デバイスを仮想スマートフォンまたは物理スマートフォンに接続するには、最初のペア設定と同じ手順を行います。デバイス マネージャーで、ペア設定するスマートフォンまたは Wear デバイスを見つけて、オーバーフロー メニュー アイコンをクリックし、[ウェアラブルとペア設定] をクリックします。
Wear OS モジュールをプロジェクトに追加する
Android Studio で既存のプロジェクトに Wear OS デバイス用のモジュールを追加することで、モバイルアプリのコードを再利用できます。
既存のプロジェクトに Wear OS モジュールを作成する
Wear OS モジュールを作成するには、既存の Android Studio プロジェクトを開いて次の手順を行います。
- [File] > [New] > [New Module] をクリックします。
- [New Module] ウィンドウで [Wear OS Module] を選択し、[Next] をクリックします。
- [Configure the new module] で、以下のとおり入力します。
- Application/Library Name: 新しいモジュールのアプリ ランチャー アイコンのタイトル。
- Module Name: ソースコード ファイルとリソース ファイル用のフォルダの名前。
- Package Name: モジュールのコードの Java 名前空間。この文字列は、モジュールの Android マニフェスト ファイルに
package
属性として追加されます。 - Minimum SDK: アプリ モジュールがサポートするプラットフォームの最も古いバージョン。たとえば、[API 26: Android 8.0] を選択します。この値は、
build.gradle
ファイル内のminSdkVersion
属性に設定されます。この属性は後で編集できます。
- [Next] をクリックします。複数のコード テンプレート オプションが表示されます。[Blank Wear OS Activity] を選択し、[Next] をクリックします。
- [Configure Activity] ウィンドウで、[Activity Name]、[Layout Name]、[Source Language] の値を入力するか、デフォルト値をそのまま使用して、[Finish] をクリックします。
Android Studio は、新しいモジュールのファイルを作成して同期します。また、Wear OS に必要な依存関係を新しいモジュールのビルドファイルに追加します。新しいモジュールは画面の左側にある [Project] ウィンドウに表示されます。新しいモジュールのフォルダが表示されない場合は、ウィンドウに [Android] ビューが表示されていることを確認します。
新しい Wear OS モジュールの build.gradle
ファイルで以下の操作を行います。
-
android
セクションで、compileSdkVersion
の値を 33、targetSdkVersion
の値を 30 に設定します。 - 必要な依存関係を追加します。詳細については、依存関係を宣言するをご覧ください。
- Android Studio プロジェクトを同期します。新しいモジュールでコードを実行する場合は、エミュレータを起動して Wear OS アプリを実行するをご覧ください。
ライブラリを追加する
注: Wear OS の開発には Android Studio を使用してください。Android Studio では、プロジェクトのセットアップ、ライブラリのインクルード、パッケージングなどを行うことができます
Android Studio のプロジェクト ウィザードを使用すると、適切なモジュールの build.gradle
ファイルに依存関係をインポートできます。ただし、依存関係はすべてのアプリに必要なわけではありません。依存関係については、以下の情報をご確認ください。
既存の Wear OS プロジェクトを最新の SDK バージョンに更新するには、Wear OS プロジェクトを開始するで示した設定を使用します。
通知
通知の依存関係については、Wear OS 上で通知を作成するをご覧ください。
Wear OS 向けの UI を作成する
Wear OS アプリのユーザー インターフェースを作成するには、Compose を使用することをおすすめします。Wear OS 向け Compose には、Wear OS フォーム ファクタ向けに設計された 20 を超えるコンポーネントが用意されています。これは、ビューベースのレイアウトに使用できるコンポーネントの数をはるかに上回っています。これらのコンポーネントは、Wear OS 向けの最新のマテリアル デザイン ガイドラインに準拠したユーザー エクスペリエンスを実現できるように設計されています。
ただし、ビューを使用して作成する場合は、Wear OS UI ライブラリへの依存関係を追加します。詳細については、Wear OS でビューベースの UI を作成するをご覧ください。
Play 開発者サービスと Wearable Data Layer API
Data Layer API を使用してデータの同期と送信を行うために、または他の理由により、アプリが Google Play 開発者サービスに依存している場合は、最新バージョンの Google Play 開発者サービスが必要です。Data Layer API を使用していない場合は、依存関係を削除してください。
スマートウォッチの電池を節約する
スマートウォッチがアイドル状態になると、またはユーザーが手のひらで画面を覆うと、スマートウォッチはインタラクティブ モードから常に画面表示モードに移行します。
スマートウォッチの電池を節約するには、常に画面表示モードの使用を避けてください。アプリがアクティブである間にスマートウォッチがシステムの常に画面表示モードに移行し、所定の時間内にユーザーがスマートウォッチを再度操作した場合、最初に表示される対象としてアプリが起動します。
特定のユースケースでは、アプリの常に画面表示モードをオーバーライドすることをおすすめします。たとえば、ユーザーがランニングを記録しており、常に時間を確認する必要がある場合は、常に画面表示モードをオーバーライドします。
常に画面表示モードに移行できるスマートウォッチ アプリのことを、常時オンアプリといいます。常時オンアプリには以下の 2 つの動作モードがあります。
- インタラクティブ
- このモードでは、アニメーションでフルカラーが使用されます。また、アプリは入力に応答します。
- 常に画面表示
- このモードでは、白黒のグラフィックで画面をレンダリングし、入力キューを表示しません。この表示モードは、Android 5.1 以降が搭載されているデバイスでのみサポートされます。
詳細とおすすめの方法については、Wear OS でアプリを表示したままにするをご覧ください。