animate*AsState
で単一の値をアニメーション化する
animate*AsState
関数は、Compose で単一の値をアニメーション化するための最もシンプルなアニメーション API です。ターゲット値(または終了値)を指定するのみで、API が現在の値から指定された値までのアニメーション化を開始します。
この API を使用してアルファ値をアニメーション化する例を以下に示します。ターゲット値を animateFloatAsState
でラップするのみで、アルファ値は指定した値(この場合は 1f
または 0.5f
)の間のアニメーション値になります。
var enabled by remember { mutableStateOf(true) } val alpha: Float by animateFloatAsState(if (enabled) 1f else 0.5f) Box( Modifier.fillMaxSize() .graphicsLayer(alpha = alpha) .background(Color.Red) )
アニメーション クラスのインスタンスを作成したり、割り込みを処理したりする必要はありません。内部では、アニメーション オブジェクト(Animatable
インスタンス)がコールサイトで作成および記憶され、最初のターゲット値が初期値として指定されます。その後、このコンポーザブルに別のターゲット値を指定すると、その値までのアニメーションが自動的に開始されます。実行中のアニメーションがある場合、アニメーションは現在の値から同じ速度で開始し、ターゲット値までアニメーション化します。アニメーション中に、このコンポーザブルは再コンポーズされ、更新されたアニメーション値をフレームごとに返します。
Compose には、Float
、Color
、Dp
、Size
、Offset
、Rect
、Int
、IntOffset
、IntSize
用の animate*AsState
関数が、すぐに使える状態で用意されています。汎用型を受け入れる animateValueAsState
に TwoWayConverter
を指定することにより、他のデータ型のサポートを簡単に追加できます。
AnimationSpec
を指定することで、アニメーションの仕様をカスタマイズできます。詳細については、AnimationSpec をご覧ください。
transition で複数のプロパティを同時にアニメーション化する
Transition
は、1 つ以上のアニメーションを子として管理し、複数の状態間で同時に実行します。
この状態はどのデータ型でもかまいません。多くの場合、次の例のようにカスタムの enum
型を使用することで型の安全性を確保できます。
enum class BoxState { Collapsed, Expanded }
updateTransition
は Transition
のインスタンスを作成して記憶し、その状態を更新します。
var currentState by remember { mutableStateOf(BoxState.Collapsed) } val transition = updateTransition(currentState, label = "box state")
次に、animate*
拡張関数のいずれかを使用して、この遷移で子アニメーションを定義できます。各状態のターゲット値を指定します。これらの animate*
関数は、遷移状態が updateTransition
で更新されると、アニメーション中にフレームごとに更新されるアニメーション値を返します。
val rect by transition.animateRect(label = "rectangle") { state -> when (state) { BoxState.Collapsed -> Rect(0f, 0f, 100f, 100f) BoxState.Expanded -> Rect(100f, 100f, 300f, 300f) } } val borderWidth by transition.animateDp(label = "border width") { state -> when (state) { BoxState.Collapsed -> 1.dp BoxState.Expanded -> 0.dp } }
必要に応じて、transitionSpec
パラメータを渡して、遷移状態の変更の各組み合わせごとに異なる AnimationSpec
を指定できます。詳細については、AnimationSpec をご覧ください。
val color by transition.animateColor( transitionSpec = { when { BoxState.Expanded isTransitioningTo BoxState.Collapsed -> spring(stiffness = 50f) else -> tween(durationMillis = 500) } }, label = "color" ) { state -> when (state) { BoxState.Collapsed -> MaterialTheme.colorScheme.primary BoxState.Expanded -> MaterialTheme.colorScheme.background } }
遷移がターゲット状態に到達すると、Transition.currentState
は Transition.targetState
と同じになります。これは、遷移が完了したかどうかのシグナルとして使用できます。
最初のターゲット状態とは異なる初期状態が必要になる場合があります。これを実現するには、updateTransition
を MutableTransitionState
とともに使用します。たとえば、コードがコンポジションに入り次第、アニメーションを開始できます。
// Start in collapsed state and immediately animate to expanded var currentState = remember { MutableTransitionState(BoxState.Collapsed) } currentState.targetState = BoxState.Expanded val transition = updateTransition(currentState, label = "box state") // ……
複数のコンポーズ可能な関数が関係する複雑な遷移の場合は、createChildTransition
を使用して子遷移を作成できます。この手法を使うと、複雑なコンポーザブルで複数のサブコンポーネントに関心を分離できます。親遷移は、子遷移のすべてのアニメーション値を認識します。
enum class DialerState { DialerMinimized, NumberPad } @Composable fun DialerButton(isVisibleTransition: Transition<Boolean>) { // `isVisibleTransition` spares the need for the content to know // about other DialerStates. Instead, the content can focus on // animating the state change between visible and not visible. } @Composable fun NumberPad(isVisibleTransition: Transition<Boolean>) { // `isVisibleTransition` spares the need for the content to know // about other DialerStates. Instead, the content can focus on // animating the state change between visible and not visible. } @Composable fun Dialer(dialerState: DialerState) { val transition = updateTransition(dialerState, label = "dialer state") Box { // Creates separate child transitions of Boolean type for NumberPad // and DialerButton for any content animation between visible and // not visible NumberPad( transition.createChildTransition { it == DialerState.NumberPad } ) DialerButton( transition.createChildTransition { it == DialerState.DialerMinimized } ) } }
AnimatedVisibility
と AnimatedContent
で transition を使用する
AnimatedVisibility
と AnimatedContent
は、Transition
の拡張関数として使用できます。Transition.AnimatedVisibility
と Transition.AnimatedContent
の targetState
は、Transition
から派生し、Transition
の targetState
が変更されたときに、必要に応じて enter / exit 遷移をトリガーします。これらの拡張関数により、AnimatedVisibility
/ AnimatedContent
の内部に入っていたであろう enter / exit / sizeTransform アニメーションが、すべて Transition
に取り込まれます。これらの拡張関数を使用すると、AnimatedVisibility
/ AnimatedContent
の状態変化を外部から監視できます。このバージョンの AnimatedVisibility
は、ブール値の visible
パラメータではなく、親遷移のターゲット状態をブール値に変換するラムダを取ります。
詳細については、AnimatedVisibility と AnimatedContent をご覧ください。
var selected by remember { mutableStateOf(false) } // Animates changes when `selected` is changed. val transition = updateTransition(selected, label = "selected state") val borderColor by transition.animateColor(label = "border color") { isSelected -> if (isSelected) Color.Magenta else Color.White } val elevation by transition.animateDp(label = "elevation") { isSelected -> if (isSelected) 10.dp else 2.dp } Surface( onClick = { selected = !selected }, shape = RoundedCornerShape(8.dp), border = BorderStroke(2.dp, borderColor), elevation = elevation ) { Column(modifier = Modifier.fillMaxWidth().padding(16.dp)) { Text(text = "Hello, world!") // AnimatedVisibility as a part of the transition. transition.AnimatedVisibility( visible = { targetSelected -> targetSelected }, enter = expandVertically(), exit = shrinkVertically() ) { Text(text = "It is fine today.") } // AnimatedContent as a part of the transition. transition.AnimatedContent { targetState -> if (targetState) { Text(text = "Selected") } else { Icon(imageVector = Icons.Default.Phone, contentDescription = "Phone") } } } }
遷移をカプセル化して再利用可能にする
シンプルなユースケースでは、UI と同じコンポーザブルで遷移アニメーションを定義することは、有効な選択肢です。ただし、多数のアニメーション値を持つ複雑なコンポーネントを作成している場合は、アニメーション実装をコンポーザブル UI から分離することをおすすめします。
そのためには、すべてのアニメーション値を保持するクラスと、そのクラスのインスタンスを返す「update」関数を作成します。遷移の実装は、新しい別の関数に抽出できます。このパターンは、アニメーション ロジックを一元管理する必要がある場合や、複雑なアニメーションを再利用可能にする必要がある場合に役立ちます。
enum class BoxState { Collapsed, Expanded } @Composable fun AnimatingBox(boxState: BoxState) { val transitionData = updateTransitionData(boxState) // UI tree Box( modifier = Modifier .background(transitionData.color) .size(transitionData.size) ) } // Holds the animation values. private class TransitionData( color: State<Color>, size: State<Dp> ) { val color by color val size by size } // Create a Transition and return its animation values. @Composable private fun updateTransitionData(boxState: BoxState): TransitionData { val transition = updateTransition(boxState, label = "box state") val color = transition.animateColor(label = "color") { state -> when (state) { BoxState.Collapsed -> Color.Gray BoxState.Expanded -> Color.Red } } val size = transition.animateDp(label = "size") { state -> when (state) { BoxState.Collapsed -> 64.dp BoxState.Expanded -> 128.dp } } return remember(transition) { TransitionData(color, size) } }
rememberInfiniteTransition
で無限に繰り返すアニメーションを作成する
InfiniteTransition
は 1 つ以上の子アニメーション(Transition
など)を保持します。ただし、それらのアニメーションはコンポジションに入るとすぐに開始し、削除されない限り停止しません。InfiniteTransition
のインスタンスは rememberInfiniteTransition
で作成できます。子アニメーションは、animateColor
、animatedFloat
、animatedValue
を使用して追加できます。また、アニメーションの仕様を指定するには、infiniteRepeatable を指定する必要があります。
val infiniteTransition = rememberInfiniteTransition() val color by infiniteTransition.animateColor( initialValue = Color.Red, targetValue = Color.Green, animationSpec = infiniteRepeatable( animation = tween(1000, easing = LinearEasing), repeatMode = RepeatMode.Reverse ) ) Box(Modifier.fillMaxSize().background(color))
低レベル アニメーション API
前のセクションで説明したすべての高レベル アニメーション API は、低レベル アニメーション API の基盤の上に構築されています。
animate*AsState
関数は最もシンプルな API で、即時の値の変化をアニメーション値としてレンダリングします。これらの関数は、単一の値をアニメーション化するコルーチン ベースの API である Animatable
によってサポートされています。updateTransition
は、複数の値のアニメーション化を管理し、状態変化に基づいて実行する遷移オブジェクトを作成します。rememberInfiniteTransition
はこれと似ていますが、無限に実行される複数のアニメーションを管理できる無限遷移を作成します。Animatable
を除き、これらの API はすべてコンポーザブルであるため、これらのアニメーションはコンポジションの外部で作成できます。
これらの API はすべて、さらに基本的な Animation
API に基づいています。ほとんどのアプリは Animation
と直接やり取りはしませんが、Animation
のカスタマイズ機能の中には、高レベル API を通じて利用できるものもあります。AnimationVector
と AnimationSpec
の詳細については、アニメーションをカスタマイズするをご覧ください。
Animatable
: コルーチン ベースの単一の値のアニメーション
Animatable
は animateTo
を介して変化する値をアニメーション化できる値ホルダーです。この API は、animate*AsState
の実装をバックアップします。一貫した継続性と相互排他性が保証されるため、値の変化は常に連続的となり、進行中のアニメーションはキャンセルされます。
Animatable
の多くの機能(animateTo
を含む)は suspend 関数として提供されるため、適切なコルーチン スコープでラップする必要があります。たとえば、LaunchedEffect
コンポーザブルを使用して、指定された Key-Value の持続時間だけスコープを作成できます。
// Start out gray and animate to green/red based on `ok` val color = remember { Animatable(Color.Gray) } LaunchedEffect(ok) { color.animateTo(if (ok) Color.Green else Color.Red) } Box(Modifier.fillMaxSize().background(color.value))
上記の例では、Animatable
のインスタンスを初期値 Color.Gray
で作成および記憶しています。ブール値フラグ ok
の値に応じて、Color.Green
または Color.Red
へのアニメーションが行われます。その後ブール値を変更すると、他の色へのアニメーションが開始されます。値が変更されたときに進行中のアニメーションが存在した場合、アニメーションはキャンセルされ、新しいアニメーションが、現在のスナップショットの値から、現在の速度で開始されます。
これは、前のセクションで説明した animate*AsState
API をバックアップするアニメーションの実装です。animate*AsState
と比較した場合、Animatable
を直接使用することにより、いくつかの点でより細かい制御が可能になります。まず、Animatable
には最初のターゲット値とは異なる初期値を設定できます。たとえば、上のサンプルコードでは、最初にグレーのボックスが表示された後、すぐに緑色または赤色へのアニメーションが開始されます。次に、Animatable
は、コンテンツ値に対する他のオペレーション(snapTo
と animateDecay
)を提供します。snapTo
は、現在の値を直ちにターゲット値に設定します。これは、アニメーション自体が唯一の信頼できる情報源ではなく、タップイベントなどの他の状態と同期する必要がある場合に便利です。animateDecay
は、指定された速度より遅くなるアニメーションを開始します。これは、フリング動作を実装する際に役立ちます。詳細については、操作とアニメーションをご覧ください。
Animatable
ですぐに使用できるのは Float
と Color
のみですが、TwoWayConverter
を指定することで、すべてのデータ型を使用できます。詳細については、AnimationVector をご覧ください。
AnimationSpec
を指定することで、アニメーションの仕様をカスタマイズできます。詳細については、AnimationSpec をご覧ください。
Animation
: 手動で制御するアニメーション
Animation
は、利用可能な最も低いレベルのアニメーション API です。これまでに見てきたアニメーションの多くは、Animation の上に構築されています。Animation
のサブタイプには、TargetBasedAnimation
と DecayAnimation
の 2 つがあります。
Animation
は、アニメーションの時間を手動で制御する場合にのみ使用します。Animation
はステートレスであり、ライフサイクルのコンセプトはありません。上位レベルの API で使用されるアニメーション計算エンジンとして機能します。
TargetBasedAnimation
他の API はほとんどのユースケースに対応していますが、TargetBasedAnimation
を直接使用すると、アニメーションの再生時間を自分で制御できます。以下の例では、TargetAnimation
の再生時間は withFrameNanos
で指定されたフレーム時間に基づいて手動で制御されます。
val anim = remember { TargetBasedAnimation( animationSpec = tween(200), typeConverter = Float.VectorConverter, initialValue = 200f, targetValue = 1000f ) } var playTime by remember { mutableStateOf(0L) } LaunchedEffect(anim) { val startTime = withFrameNanos { it } do { playTime = withFrameNanos { it } - startTime val animationValue = anim.getValueFromNanos(playTime) } while (someCustomCondition()) }
DecayAnimation
TargetBasedAnimation
と異なり、DecayAnimation
では targetValue
を指定する必要はありません。代わりに、initialVelocity
と initialValue
、および指定の DecayAnimationSpec
によって設定された開始条件に基づいて targetValue
を計算します。
DecayAnimatioin は多くの場合、フリング操作の後に使用され、要素の速度を遅くして停止させます。アニメーションの速度は、initialVelocityVector
で設定された値から始まり、時間の経過とともに遅くなります。
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